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 生活者の視点で、わかりやすい情報を基本とし、法律や経済、くらしの様々な有益な情報をコラムとして、学識経験者や専門的な分野で活躍する方々に寄稿していただいたものを掲載しています。

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厳しさの中にある温かさ            2010/Vol.33
 先日夜遅く、学生時代の恩師の訃報を聞いた。教えてくれた友人のメールは、訃報なのにどこかほのぼのして温かかった。
 「花に囲まれて、好きだった音楽が流れるなか、安らかに眠られていました。一見とても厳しいけど、一歩懐に入るといつも温かい先生らしいとってもいいお別れでした」そのメールを読んで、私は自分が体験した先生の「厳しさと温かさ」を思い出した。
 それは、入試の面接だった。提出した書類をとても厳しく批判されたのだ。それはもちろん一生懸命書いたものだった。今思えば、わかったつもりの言葉ばかり並べているものだったが、当時はそれが精一杯だったので、予想外に厳しく批判をされて傷ついた。至らない箇所をどうするのかと追及されたが、自分の未熟さを認められなかった私は、どうしてここまで言われるのだろうと悔しくて涙がこぼれそうになった。でも面接で泣くなんて嫌だと思って我慢していた。一段楽したときに先生がふと言った。「私はあなたを心配して言っているんです」さっきまでの様子と全く違い、やさしい温かさがこめられた口調だったので、戸惑ったことを覚えている。当時の私の強がり、未熟さを認められない弱さを見て、自分の痛い部分と直面せざるを得なくなる入学後の厳しい実習を「のりきれるのか」と危惧したのだと今なら想像がつく。でも当時は分からなかった。
 後に、同期の誰もが同じような体験をしていたことを知った。しかし実際に指導を受けてみると、みんな先生が好きになった。友人が表現どおり「一歩懐に入るといつも温かい」からだった。莫大な課題を出すし、耳の痛い指摘も多かった。しかしちゃんと見守ってくれた。本当に必要なことを言われていると肌で感じたので、弱音を吐きつつも、それぞれがちゃんと自分の問題と直面した。辛い思いもしたが、それは今後就く仕事のためにも必要なことだったし、人間として成長する上でも大事なことだった。
 耳の痛いことを言われると人は不快に思う。そんなことは聞きたくなくて、反対に相手を攻撃して自分を守ったりする。しかし、言ってくれる人がいるというのは実は幸運なことだ。自分で気づけない欠点や、未熟さゆえの問題などを適切に指摘するのは、容易なことではない。社会人になって感じることは、年齢が上がるごとにそういうことは言われなくなる、ということだ。若いうちは、心ある先輩が嫌われるのを覚悟で教えてくれることがある。でもある程度の年になると、痛い目にあうことはあっても、教えてもらえることは少なくなる。ただ、自分を大事にしてくれる人たちは時々耳の痛い忠告をしてくれるから、そういう人が周りにいる幸運を忘れないようにしたい。
 当時よりましになったと思いたいが、まだまだ未熟で成長する余地は残っている。でも、あの体験がなければ私はもっといろんなことに気づかないままだったと思う。
 訃報は悲しいが、同時に温かさと大切なことを改めて思い出せた夜だった。
                        
                              臨床心理士 篠原 茜

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